事例紹介/事例02 病理診断の結果: ステージ0の膵臓がん

当事例の概要

膵尾部主膵管に広狭不整を伴った狭窄像を、上流主膵管に拡張(3mm)を認めた事例です。狭窄部主膵管は不明瞭で途絶の可能性があり、同部位で膵実質の限局的萎縮を認めました。明らかな腫瘤形成や濃染異常は認めませんでしたが、早期膵癌の可能性、追加精査を指摘しました。

術後病理結果

Tis N0 M0 Stage0
Carcinoma in situ

撮影内容

胸部~骨盤CT(造影有)

所見

腹腔内に明らかなfree airや腸管径拡大などの穿孔・閉塞所見や憩室炎や大腸炎、腹膜炎等の炎症所見、尿管結石は指摘できません。腹部領域の血管に閉塞や虚血症状をきたす狭窄所見も認めません。
膵は尾部主膵管に広狭不整伴った狭窄像を認め、上流の主膵管拡張(3mm)を認めます。尾部には小さな石灰化も認めます。狭窄部では主膵管は不明瞭となり、同部位で膵実質のくびれ萎縮を認めます。腫瘤形成や濃染異常は認められませんが、早期膵がん(上皮内がんもしくはT1程度の浸潤がん)の可能性があります。MRCP検査やEUSでも精査下さい。くびれ周囲には微小嚢胞も数個疑われます。(図1-4)

膵頭部背側および近傍の下大静脈背側リンパ節、傍大動脈リンパ節は4-6mm厚と軽度の腫大を示します。(図5,6)膵炎などに伴う反応性腫大を疑いますが、上記膵病変が悪性の場合転移性の可能性もあります。
左副腎はやや厚く認めますが。過形成変化を疑います(図7)。
盲腸・上行結腸下部には数個の憩室を認めます。周囲に明らかな憩室炎を疑う所見は認められません。上行~横行結腸には多量の糞塊を認め、便秘症の可能性があります。(図8,9)

子宮右背側に42mmの漿膜下筋腫を疑います。(図10)。
肝右葉S8に小嚢胞を認めます。
左腎腎門部に最大10mmの嚢胞を認めます。右腎にも微小な嚢胞を幾つか認めます。
胆嚢,脾, 尿管, 膀胱に明らかな異常を認めません。
病的な腹水貯留は見られません。

右肺上葉S1に4x2.7mmのすりガラス結節(pure/part solid GGO)を認めます(図11)。異型腺腫様過形成(AAH)や上皮内腺がん(AIS)などが考えられます。経過観察願います。
右肺下葉S10末梢肺野には微小粒状影と牽引性気管支拡張を伴う炎症後変化を認めます(図12,13)。
両側下肺野には軽度の炎症後変化を認めます。
肺野に腫瘍や活動性炎症性陰影を認めません。
縦隔・肺門・鎖骨上窩に有意リンパ節腫大なし。胸水なし。心拡大なし。
甲状腺左葉に一部に石灰化を含む低吸収結節を数個認めます(図14)。USと対比下さい。
冠動脈に石灰化は認められません。

診断

明らかな腹膜炎の所見は認められません。
①. 膵尾部主膵管狭窄+くびれ萎縮:膵尾部の早期膵がん(上皮内がんもしくはT1程度の浸潤がん)の可能性あり。
②. 上腹部(膵頭背側・下大静脈背側・傍大動脈)リンパ節軽度腫大:反応性or転移性
③. 左副腎過形成疑い④. 上行結腸憩室、便秘症疑い⑤. 漿膜下筋腫疑い⑥. 肝・腎嚢胞⑦. 甲状腺左葉結節⑧. 右肺上葉すりガラス影(pure/part solid GGO;4mm)