事例紹介/事例04 病理診断の結果: ステージ0の膵臓がん
当事例の概要
膵臓がんを疑うサイズのIPMNを発見しました。
病理検査を行う際の手技は複数あり、どれを行うかを示唆するため、IPMN内部の充実部を探し指摘をして結果を返送しています。
この方は、IPMNのサイズが大きく病理検査をすべきサイズとなることが予想され、他の医療機関でも初期の膵臓がんが見つかる可能性の高い事例でした。
病理結果
上皮内がん Intraductal Papillary Mucinous Neoplasms and low-grade pancreatic intraepithelial neoplasia of the pancreas.
撮影内容
上腹部~骨盤CT(造影有)
所見
腹部造影CT: 膵頭部に主膵管と連続する47x30x18mmの多数の隔壁を伴った多房性嚢胞性病変を認めます(図1-3)。主膵管も頭部4mm,体尾部3mmと拡張を認めます(図4)。IPMN(膵管内乳頭粘液性腫瘍)と考えます。頭部の多房性嚢胞は隔壁やや肥厚し、一部は淡い結節状に認められる部位も認めますが、隔壁の一部の可能性もあります(図4)。頭体部移行部の主膵管内に2mm程の微小な濃染結節を1-2個認めます。微小のため偽病変の可能性もありますが、主膵管内の乳頭状病変の可能性も否定できません。(図5-8)
・小さな肝嚢胞を散見します。
・胆、脾、腎、副腎に特記すべき異常は指摘できません。
・子宮左後壁に45mmの石灰化を伴う漿膜下筋腫を認め(図9)、子宮右前壁には60mmの濃染不良で淡く結節状濃染部も伴った腫瘤を認めます。こちらも変性した漿膜下筋腫もしくは右卵巣線維腫を疑います。(図10,11)
・膀胱に特記すべき異常は指摘できません。
・便秘傾向です。その他、消化管に明らかな粗大病変は同定できません。消化管については内視鏡にてご確認下さい。
・腹部に有意なリンパ節腫大なし。
・腹水なし。
・左肺舌区に網状影、索状影あり(図12)。炎症後変化疑い。
診断
膵分枝型IPMN+主膵管の軽度拡張
:頭部多房性嚢胞は47mmと大きく、隔壁に肥厚部あり、微小充実部の可能性もあり
頭体部移行部の主膵管内に微小濃染結節あり、R/O 乳頭状病変
悪性病変併存の可能性(IPMN divided IPMC s/o)あり、EUS、細胞診など確認下さい。
漿膜下筋腫疑い(45mm,60mm):右前壁60mmは右卵巣線維腫と鑑別必要
肝嚢胞
左肺舌区の炎症後変化