事例紹介/事例5 病理診断の結果: ステージ0の膵臓がん
当事例の概要
MRCP検査で膵体部に初期腫瘍の可能性があり、追加精査目的で施行した造影CT検査です。
MRCP検査同様に膵体部主膵管広狭不整・狭窄+分枝拡張+くびれ様萎縮を認め、同部で認めた6mm程度の後期濃染域より早期膵臓がんの可能性を指摘した事例です。
術後病理結果
pTis pN0 MX stage0, pR0
撮影内容
胸部~骨盤CT(造影有)
所見
<前回MRI2019/04/15と比較しました。>
膵体部主膵管に広狭不整と周囲に分枝拡張と主膵管の僅かな狭窄を認め、同部の膵実質は前後方向でくびれ様萎縮を認めます。(図1-5)同部で早期濃染不良域は認めませんが、門脈相~平衡相で小さな後期濃染(6mm程)を認めます。(図6)早期膵がん(CIS(Tis)もしくは微小な腫瘤形成のステージ1b以下)の存在が疑われます。EUS-FNA/ENPDなどで精査をお願いいたします。
膵尾部には小嚢胞を数個疑います。(図7)頭体部にも小さな低吸収域を認め、微小嚢胞や脂肪置換を疑います。膵頭鉤部には石灰化を認め、背景に慢性膵炎の存在を疑います。(図8)
肝右葉に小嚢胞を認めます。
左腎に微小嚢胞を認めます。
胆嚢・脾・右腎・副腎・膀胱に明らかな異常を認めません。
傍大動脈リンパ節腫大を認めません。
腹部大動脈は中等度~高度の壁石灰化を認めます。動脈瘤は認めません。
左卵巣静脈の拡張蛇行を認めます。
子宮底部には32mmの漿膜下筋腫を認めます。
両付属器には明らかな腫瘤は認めません。
病的な腹水貯留は認めません。
腰椎海綿骨CT値はやや低下していますが、明らかな骨粗鬆症変化は認められません。
左肺上葉S1+2に脈管・気管支の引きつれを伴うすりガラス影(10x10x7mm)を認めます。炎症後変化・異型腺腫様過形成(AAH) や上皮内腺がん(AIS)などが考えられます。経過観察もしくは胸腔鏡下生検(VATS)など検討下さい。
両下肺野に軽度の炎症後変化を認めます。
左肺下葉にすりガラス影を認めますが、こちらは炎症後変化と考えます。
冠動脈は3枝とも高度の壁石灰化を認め、冠動脈疾患の存在が疑われます。必要あれば冠動脈CTなど検討下さい。
肺門・縦隔にリンパ節腫大は認めません。
胸水貯留は認めません。
診断
①膵体部主膵管広狭不整・狭窄+分枝拡張+くびれ様萎縮+後期濃染域(6mmほど):早期膵がん(CIS(Tis)もしくは微小な腫瘤形成のステージ1b以下)の存在が疑われます。EUS-FNA/ENPDなどで精査をお願いいたします。
②膵小嚢胞数個:IPMNなど疑い
③膵石灰化:慢性膵炎疑い
④左肺すりガラス影(10x10x7mm):炎症後変化・異型腺腫様過形成(AAH)や上皮内腺がん(AIS)など。経過観察もしくは胸腔鏡下生検(VATS)など検討下さい。
⑤冠動脈石灰化高度:冠動脈疾患疑い:冠動脈CTなども検討下さい。
⑥動脈硬化性変化(中等度~高度)
⑦肝・左腎嚢胞
⑧子宮筋腫(漿膜下32mm):左卵巣静脈拡張・蛇行