事例紹介/事例16 病理診断の結果: ステージ1の膵臓がん
当事例の概要
多発膵分枝型IPMNs、主膵管軽度拡張と体尾部萎縮が認められ、2018年9月より当院にて厳重な経過観察を実施した症例です。
2021年8月に実施した造影CT検査、同年9月に実施した腹部造影MRI検査では、主膵管の広狭不整、膵尾部の遅延濃染域を認め、同部左側のMRI所見では拡散強調画像での淡い高信号域をも認め膵癌の初期変化であると示唆しました。しかしEUSでは膵尾部実質に変化を認めず、引き続き経過観察を行うこととなりました。
2022年に実施した造影CT検査(事例15を参照)、造影MRI検査ではこれらの所見とともに同部の主膵管狭小化が顕在化し、早期膵癌の可能性を再度指摘した症例です。
病理結果
pT1cN0(0/28)M0 pStage1A
撮影内容
MRCPMRI (造影有)
所見
2021/09/06のMRI検査、2022/02/17のCT検査と比較しました。
膵実質の萎縮、辺縁凹凸を認めます。慢性膵炎に伴う形態変化と思われます。(図1)
膵尾部に25mm、膵頭部に13mmなど、膵内に複数の嚢胞を認めます。分枝型膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)と思われます。
著変ありません。(図2)
膵尾部にDWI淡い高信号域、遅延濃染域を認め、主膵管が狭小化しています。主膵管狭小化は今回MRIおよび直近CTで顕在化しています。(図1-4)
膵尾部の嚢胞近傍にも遅延濃染が見られますが、著変ありません。
主膵管は広狭不整で、最大4mmに拡張しています。著変ありません。
肝実質の脂肪含有率は5%で、軽度脂肪肝です。前回8%より軽減しています。(図5)
肝内外の胆管が軽度拡張していますが、胆摘後変化で説明可能です。閉塞機転となりそうな腫瘤や結石は認められません。
両腎嚢胞を認めます。
副腎、脾臓に異常所見を認めません。
消化管に粗大病変を認めません。
上腹部にリンパ節腫大、腹水貯留を認めません。
診断
慢性膵炎。(図1)
分枝型膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN):著変ありません。(図2)
膵尾部の遅延濃染域、DWI淡い高信号域:同部の主膵管狭小化が顕在化しています。早期膵癌を疑います。(図1-4)
軽度脂肪肝。やや軽減しています。(図5)